12月中旬のサンフランシスコ滞在レポートです。
1, TAMシンガポール2年間の営業活動で深く理解したことは、日本の受託モデルではアジアのローカル大手企業への訴求力が弱く、グローバルのやり方をもっと知り取り入れていく必要がある。
2, サンフランシスコやシリコンバレーのITの人たちは今の激変の時代をどうのように考えてどう仕事しているのか、直接コミュニケーションしながら肌感覚として身に付ける必要がある。
今回の滞在では、いろいろな企業に訪問しエンジニアの方々をはじめいろいろな方に直接お話を聞くことができ大きな成果を得ることが出来ました。
初めてのサンフランシスコ訪問で土地勘のない中、5年前までTAMに勤めていた元TAMスタッフが現在サンフランシスコでWeb制作や編集デザインの仕事をしているので、車での移動が必須と言われる現地で大変助けてもらいました。
また、
現地の名だたるIT企業の日系メンバーを中心に30数名で運用されているヨットチームのクルーとして参加させていただき、サンフランシスコ湾のヨットレースにも参加させてもらうという幸運にも恵まれました。
たくさんの方をご紹介いただき大きな刺激をもらえました。
おかげで、Googleランチにも招待してもらってたくさんのアドバイスをもらったり、Evernote訪問でもじっくりお話を聞くことができました。
他にも直接のアポイントを快く受け入れてくださったフリーでご活躍されているデザイナーやエンジニアの方々、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の方々、企業家の方々のお話を公開できる範囲でレポートにまとめてみようと思います。
受託の仕事というのが成り立たない
- 特に大手の場合、インハウスに開発者をメインに雇うようになり、UIやUXが重視されるなかデザイナーも契約して内部に取り込むことが普通になっている。
- 作業系にまで落とし込まれた仕事はオフショア体制を持つインドやアジアからの進出企業にアウトソースされることが多い。
- 外注だと時間がかかり過ぎる。Webサイトのマーケティング施策でも、モバイルアプリの開発でも、仕様をきちんと詰めて、あーでもない、こーでもない、と言いながら、昔のように半年も1年もかけてやっていたのではもう市場が変わっている。
- 大きなプロジェクトもリソースを大量投入してでも、3ヶ月以内の開発じゃないと、投資額をドブに捨てる可能性が高くなり非常にリスキー。
- Webサイトの受託の仕事はなくなっていくだろう。ありモノを組み合わせれば出来てしまうので、そこに価値がなくなりつつある。社内で吸収してマーケティング活用するツールと認識されている。
- 中堅・中小企業の場合でも制作会社に発注するという感覚があまりない。まずは個人的な繋がりが出来て、そこから仕事が生まれていくことが多い。
モノづくりは圧倒的に簡単になった
● ここ数年、ものづくりは圧倒的に簡単になった。
オープンソースを組み合わせることによって、一からコードを作らなくても済むようになった。
技術はますます容易になり昔のように高度な専門技術など必要としなくなりつつある。
もはや開発すること自体に競争優位があるのではなく、「何をするか」「何を産み出すか」そこしか勝負出来なくなった。
● 日本の企業は「何をすべきか」産み出すこと・考え出すことがどちらかというと苦手で、「考える」ことまで外出ししている場合が多い。
1社でいろいろなタスクを引き受けてくれる総合代理店があるのは日本だけで、アメリカ企業は社内にタスクの切り分けを行うマーケティングノウハウを持っている。
今ののままでは日本企業がグローバルでは勝てない可能性がある。
● シリコンバレーでは、「何をするか」考える事・産み出すことこそが価値があり、「どうつくるか」という価値はどんどん小さくなってきている。
ITの主導権がエンタープライズからコンシューマーに移った
● コンピューティングのメインがエンタープライズからコンシューマーに移った。
iPhoneはコンシューマー向けのものだが、企業内部の活動でもなくてなならないものになった。
SNSもコンシューマー向けのものを企業が逆輸入しているようなもの。
クラウドとはそういうことで、主導権がエンタープライズからコンシューマーに移るということ。
その昔、コンピューターは企業向けに作られていたものだが、エンタープライズ向け企業が凋落し、コンシューマー向けのAppleが世界一になりGoogleが王者になった。
● 今はエポックメイキングな時代の転換点で、コンシューマー向けのハード、サービスを志向するところに時代はシフトしている。
コンシューマーを見つめることが大事で、その技術やサービスが企業向けに使われていくことになる。
● 技術がエンタープライズから個人に移った
ますますスピードが重視されてきている
● 企業向けの受託サービスは先細りする。
なせなら企業は内製化してこれまでにないスピードが求められているから。
失敗を恐れずスピードを重視する姿勢が優先順位として高い。
OSが変わる度にコードをほぼ書き直すという大仕事があるが、エンジニアを大集合して短期間でリリースしていく、そういうスピード感に変わってきている。
サンフランシスコはバブル状態、頂点の状態
● サンフランシスコ進出を考える日本企業は後を絶たないが、今は頂点にあるのだろう。
長い歴史的に見てもそういうポジション。
アジアに成長点が移っていると考えられるが、情報という観点からはシリコンバレーはこれからまだまだ長期的に魅力的。
● サンフランシスコ進出が目的になっている日本の会社だと2~3年で撤退するのが一般的な過去の例。
目的やVisionが弱すぎるからすぐあきらめることが多い。
一つでもいいので成し遂げたいことを見つけてチャレンジするのが良い。場所が問題なのではない。
失敗しても得るものが大きいし、多くの情報も入ってくる、その得るものこそが今後の指針となる。
ボクはこんなふうに考えています
● どの会社でもコミュニケーションが非常に重視されている。
TV会議などの遠隔コミュニケーションも重要視されていて遠隔会議用モニター設置がいたるところで見受けられる。
職場でのコミュニケーションはさらに重要で、壁やちょっとしたスペースなどを有効活用しすぐにコミュニケーションの取れる工夫も多い。
急に思いついたアイデアやクリエイティブを大事にしていることがよくわかる。
● プロセスの違い
- 米:完結型 、プログラマー、or デザイナー 1人で完結する、守備範囲が広い、信頼できる「個人」に発注される傾向
- 日:分業型、ディレクタ → デザイナー → プログラマー 流れ作業で分業化、受信頼できる「会社」に発注される傾向
● 働き方に対する考え方の違い
- 米:効率重視、合理的、残業少ない、作業はアウトソース
- 日:長時間労働を厭わない、細かいところにまで気遣いこだわる
● Webサイトやツールに対する捉え方の違い
- 米:画面はプログラム言語で表示するもの、有りモノ・テンプレートをつかうもの、必要な情報を探すツール、すでにあるものは我慢してでも使う
- 日:画面をページとして捉え一番見やすいようにレイアウトするもの、情報を発信するツール、自社にマッチするようできるだけカスタマイズをする
● 今後、Web関連の制作や開発は
- →日本語の日本語圏
- →中国語の中華圏
- →アメリカ、アジアを始めとする英語圏
という言語、働き方、文化の違いなどで違った発展をしていくと思っています。
ただ、絶対数的に英語圏の人口が圧倒的に多いことと(ますますスタンダード化しようとしている)、これまでにない新しいものを産み出していくことは今のところ英語圏が有利に推移している、といったことから英語圏の考え方や作り方がスタンダード化していく傾向が加速する。
すでに企業からの発注が会社宛てよりも、個人宛てにシフトしていることは多くの人が感じていることでしょう。
(中華圏は独自の発展をすると思うのですが、理解不足です)
日本語圏の制作や開発の仕方はますます「ガラパゴス」とか言われていくのでしょうが、
日本のモノづくりは素晴らしいものであり、自信を持って取り組んでいくべきだと思う。
しかし、グローバルを理解した上で取り組むことが必須で、世界に目を向けていなければ遠からず淘汰されてしまうだろう。
「ガラケー → スマホ」に置き変わったような劇的な変化が、日本式の受託の制作・開発でスグに起るとは考えにくいが、言語・文化・働き方が違うので一気には起こらないが、徐々にグローバルに近づいていくだろう。
英語でも日本語でもどっちでも同じ、といったような制作・開発がどんどん多くなるだろう。
● 私たちは、何がグローバルなスタンダードになっていくか、いつもアンテナを敏感にして理解した上で、
日本というローカル、アジアというローカル、アメリカというローカルで仕事ができるように、各地の言語・文化・働き方に合わせたローカライズが重要。
グローバルの流れはこうだから・・・、日本ではこういう流れだから・・・、という表面的で安易な情報に流されることなく、自らの強みを活かせるよう国境なきローカライズを進めるべき。
グローバルを理解した上で日本へのローカライズを考えていくことが大事だ。
そういう「軸」を持っていれば、今身に付けておくべきスキルは何か、考え方は何か、何をすることがより望ましいか、・・・、正解はわからないにしても、自分やチームの今出来ることと強みに合わせた舵取りにつながると思っています。
2014年中にはTAMもサンフランシスコで小さくても確実な1歩を踏み出していきたいと考えています。